自分や家族ががんを患った場合、何よりも手に入れたいのは正確な情報だ。インターネットにも書店にも、多くの情報があふれているが、怪しげなもの、宣伝めいたものもあり、どれを信じたらいいのか分からない。
そんなとき頼りになるのが、学会などの専門家組織が、科学的な根拠に基づいて推奨する標準治療をまとめた診療ガイドライン(指針)。もともとは医師の診療支援が目的のため、専門用語が多く難解だが、患者向けに分かりやすく作り直されたものもある。 日本乳癌学会 が7月10日に発売する「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2014年版」(金原出版 、2484円)もそんな本の一つだ。06年に発刊され、今回が3回目の改訂。昨年公表された最新の医師向けガイドラインに基づき、医学の進歩や社会的環境の変化を反映させた。 特徴的なのは全編がQ&A方式になっていること。原因と予防、検診と診断、治療法、再発と転移、治療費などの問題について、大きく70項目の質問を設けて回答した。 作成には乳がんの専門医のほか、看護師や薬剤師、患者会の代表らも参加。実際の診療の場で患者が疑問に思うことが多い項目を厳選した。 金原出版によると、改訂前の12年版は約1万5千部が売れた。医学書としてはかなり多い数字だという。国内で乳がんと診断される人は年間約6万人で、女性がかかるがんの中で最も多い。一方で、乳がんは早期発見すれば生存率も高く、治療後の経過が比較的良いがんと言われる。「患者数が多く治療後の期間も長い。この本に対するニーズは大きいはず」と同社担当者は話している。